“軽油のゲレンデ”を試して見えてきたもの:’16 Mercedes-Benz G350d(w463)《R.M.Brief Test#1》(後編)

ブリーフテスト

伊豆旅行2日目:伊豆半島を横断する

”軽油のゲレンデ”「G350d」で往く、1泊2日の伊豆旅行。
試乗インプレッションの<後編>となる本記事では、伊豆旅行から東京への帰路の様子と2日間のテストを通して見えてきたGクラスの実力について見ていくこととしよう。

▲2日目の朝、宿泊した「堂ヶ島温泉ホテル」のエントランス前にて。最新鋭ではないがよく手入れされたレトロな雰囲気が旅情を盛り上げる

伊豆旅行2日目の朝は、今回の旅の宿である「堂ヶ島温泉ホテル」から始まった。
堂ヶ島エリア唯一という源泉掛け流し温泉が自慢の同ホテルは、駿河湾に面した静岡県は加茂郡、西伊豆町に位置するどこか懐かしい雰囲気の漂うリゾートホテルだ。
かつての伊豆観光ブームの頃に建てられたと思しき同ホテルは、現在の目からすると少々クラシカルな雰囲気があるものの手入れは行き届いており清潔。特にホテル名にも冠する自慢の温泉は素晴らしく、中でも建物直下から湧出しているという低温(32℃)の源泉をそのまま使用した「ぬる湯」は、その泉質・温度共に今まで入った中で最高クラスのものであった。
(筆者は水風呂を得意としていないのだが、サウナ上がりにそのまま入るとこの世のものとは思えないような心地よさがあった。)
温泉のほかにも朝夕の食事をはじめとする各種ホスピタリティも充実しており、4人で3万円を切る価格を考えるとそのコストパフォーマンスは抜群。他人に教えたくないお気に入りの宿をまた一つ見つけてしまった。
新しく煌びやかなものが良い、という価値観から一歩距離を置き、自らの持つ本質を大切にし個性に磨きをかける。そういう意味では今回テストしているGクラスにもどこか通じるものがあるのかもしれない。そんなことを思いながらホテルを後にした。

ホテルを出発すると、まずは伊豆半島の西岸沿いに車を走らせ、国道136号線を北上していく。
海岸線から少し離れた山間を進むこの道は数百mおきにトンネルが現れ、緩やかな起伏と線形の良いコーナーが連続する気持ちの良い道である。
ここでもやはりG350dのトルクフルなエンジン特性が真価を発揮する。踏み始めの数cmにこそダルな領域が存在するものの、右足の親指に少々力を込めるだけで2.5tを超える巨体は600ニュートンのトルクに蹴飛ばされ怒涛の加速を開始する。
(このスロットルの踏み始めに極めてダルな領域がある独特のフィーリングは、以前試乗した3rdレンジローバーでも同様の印象を抱いたことがある。数mmのライン取りのミスが致命的となるオフロード走行の場面において、極微速時のコントロール性の良し悪しはそのまま悪路走破の成功率に直結する。そのため、意図的に不感帯とも呼ぶべき領域を設定することで、より繊細で正確なスロットル・コントロールを可能にしているのではないか?というのが筆者の見立てである。)

わずか1600回転という低い領域から最大トルクを発揮するOM642型ユニットにとって、この程度のパフォーマンスは朝飯前と言ったところ。次々と現れるコーナーとアップダウンを夢中になってクリアしているうちに、程なくして本日最初の目的地である宇久須港へ到着した。

駿河湾に面する宇久須エリアの西岸に位置する宇久須港は、可愛らしい赤い灯台が目印の小さな港である。シーズンによってアジやイナダ、アオリイカなどを釣ることができるようで、防波堤は釣りを楽しむ地元住民で賑わっていた。我々は決して釣りをするために立ち寄ったわけではないが、穏やかで美しいこの小さな港のロケーションに惹かれ、旅の相棒Gクラスを労い撮影することにした。
本記事のアイキャッチ画像となっているこの写真は、ここで撮影したものだ。

▲伊豆旅行2日目、最初の目的地である宇久須港にて。地元の釣り好きが集まるこの小さな港は「観光地」と呼ぶような場所ではないものの、Gクラスの魅力を引き立てるロケーションである。
▲美しいステンレスで縁取られ、スリーポインテッドスターが輝くスペアタイヤカバーはGクラスならではの風景。足回りと同じ意匠のアルミホイールが奢られたフルサイズのスペアタイヤの重量はなかなかのものであり、バックドアの開け閉めには少々力を必要とする。

暫しの休憩を終え、次なる目的地である伊豆半島東岸を目指し、半島中央を横断するようにして東へ向かう。

これまで触れていなかったが、2016年の「G350ブルーテック」から「G350d」へのマイナーチェンジ時に追加されたアイドリングストップ機能も、地味ながら見逃すことのできない重要な機構の一つである。
90年代の欧州車を中心に、”ちょっと古い”クルマばかり乗り継いできた筆者としては、急な「エンスト」を彷彿とさせるアイドリングストップ機能はあまり好みではなく、装着車に乗るときは進んでオフにすることも多い。
しかし、走行中こそ音・振共にディーゼル車であることをあまり意識させないものの、信号待ち等の停車時にフロアやペダル、シートを通じてジリジリとしたエンジン起因の振動が容赦なく進入してくるセッティングのG350dにとって、アイドル時の不快な振動を軽減(というかエンジンが止まっているので振動は0である)してくれる同機能は、もはや欠くことのできない「快適装備」の一つとしてカウントすべき必須機能とも言える。発進時はステアリングのわずかな舵角やブレーキペダル踏力の変化に応じてエンジンが素早く再始動するため、迫る後続車にドライバーがやきもきさせられることはない。
こういう僅かな快適さの積み重ねが、長時間・長距離を経て最終的な疲労度に大きな差を生むのである。

引き続き、国道136号線を走り伊豆半島を横断する。
途中、友人の提案で半島の中央付近に位置する『萬城(ばんじょう)の滝』に立ち寄り、見学することにした。

▲「萬城の滝」で疲れを癒す。辺りには水飛沫と共にマイナスイオンが満ちており、ぼーっと眺めているだけでも心身が回復するような気がする。

高さ20m、幅6mという萬城の滝はその迫力もさることながら、柱状節理の崖の下部が大きく抉られ、まるで宙に浮いているかのように見える独特の地形も相まって、日本とは思えないような異国感漂う光景が魅力だ。滝の周囲の設備を見るに、かつては滝の裏を周れる見学ルートも存在したようだが、崩落の危険があることから閉鎖となっていた。経年で錆びついた手すりと鬱蒼と草が生い茂る通路に諸行無常を感じる。果たして滝の裏から眺める景色はどのようなものだったのだろうか…。

それにしても、今回の伊豆旅行では意図せずして数多くの滝を見ることとなった。本記事には掲載しなかったものを含めると、大小実に10ヶ所近くの滝を訪れている。それだけ伊豆半島は自然が作り出した起伏の多い地形に加え、清澄で豊富な水に恵まれた豊かな土地であるということだろう。

萬城の滝の見学を終えると、さらに30分ほど車を東に走らせ、今回の旅行で最後の観光スポットとなる『芸術の森 ろう人形美術館』へ。その名の通り、世界各国の著名人を等身大で実物そっくりに再現した”ロウ製”人形を見ることのできる施設である。展示物はかなり年季が入っているようで、今では見かけることの少なくなった往年のスターや映画・ドラマのキャラクターが所狭しと展示されている。
館内には撮影制限が設けられていることから、本記事上では施設の様子をつぶさにお伝えすることはできないが、色々な意味でなかなかミステリアスで興味深い観光スポットである。多くの方にとっては、一度見学すればその後何度も足を運ぶことにはならないだろうが、もしまだ一度も訪れたことがないのであれば一見する価値はある、と言っておこう。

▲この旅最後の観光スポットである「芸術の森 ろう人形美術館」にて。館内写真撮影禁止(有償で撮影可能となるオプション有り)のため施設内の雰囲気をお伝えすることができないのは残念だが、いろいろな意味で興味深い場所の一つである。気になる方は是非現地を訪れてほしい。

ろう人形美術館の見学を終え外に出ると、時刻はすでに昼時。美術館から車で数分の距離に位置する「伊豆高原旅の駅ぐらんぱるぽーと」に移動して昼食とする。
長いようで短かった伊豆旅行も気付けば終盤戦。Gクラスとの旅路も間も無く締めくくりだ。

東名から首都高へ。そして旅の終わり。

昼食を終え静岡県内に住む友人を熱海駅まで送り届けた後は、Gクラス返却のため旅の出発地である赤坂を目指して東京方面へ走っていく。

インプレッションの前編でも述べた通りだが、流石に設計時の想定速度域が高く設定されているドイツ車らしく、本質的にはオフローダーでありながらもGクラスの高速道路でのマナーは非常に良い。
RB方式のステアリングはコーナリング時に優れた操舵フィールを示すだけでなく、中立付近にも適度な手応えがあり、直進時はステアリングに手を添えるだけ。さらにトルクフルなディーゼルユニットに7速 オートマチックトランスミッションを組み合わせるG350dであれば、100km/hを超える速度で巡航している時でもその回転数は2000回転を少し上回る程度。当然、回転数が低ければ自ずとノイズレベルも低く抑えられることから、その車室空間は極めて快適である。

そんな良路では不満ない走りを見せるGクラスだが、他方アンジュレーションが連続するような路面に遭遇すると少々その馬脚を露わした。ストロークがなかなか収束せず、収束しないうちに次のアンジュレーションがやってくるのだ。ただでさえ重いアクスルを前後のバネ下に抱えている上、ブッシュのコンプライアンスがソフトで大きなストロークを持つ足回りは上下にユサリユサリと揺れ続け、ダンピングが不足しているような印象を受けた。
冒頭にも述べたように、本車に装着されているタイヤ(GOODYEAR EfficientGrip SUV HP01)の空気圧は指定値よりやや低くなっていると思われるため、タイヤの縦バネがよりソフトになっていることも、その印象を強くする一因にもなっているかもしれない。さらに現車は走行距離も8万キロを超えていることから、ダンパーを始めとする足回りの劣化も多少なりとも進んでいるだろう。
いずれにせよ、この個体の印象だけを以てGクラスの足回りについて結論付けるのは早計と言わざるを得ない。機会があれば走行距離の浅い他のサンプルも試してみたいところだ。

また、運転環境についても不満が残った。
運転を始めて早々「ドラポジが出ない!」と嘆いていたのは既にお伝えした通りであるが、どうやらGクラスはシートの作りについても筆者の体とは合わないようである。
Gクラスの本革シートはかつてのw124やw201シリーズの本革シートを彷彿とさせるクラシカルな縫製のものだが、背中から腰にかけてのサポート性や掛け心地に特段の不満はないものの、パンと張った座面の面圧の高さがどうにも気になった。
いくらドラポジがきっちり取れていない状態(筆者はどちらかというと椅子に深々と座るタイトなポジションを好むため、決して腰が前にずれているようなダラっとした運転姿勢は取っていない)とはいえ、1時間も連続して走っているとお尻周りの収まりが悪くなってきて、座り直すこともしばしば。
当初これは筆者だけの問題かと思っていたが、助手席に座る友人もアシストグリップを掴み頻繁に着座姿勢を変えていたことからも、やはり同様の印象を抱いていたのかもしれない(これについては本人に確認することまではしなかった)。
以前、縫製の似たw124の本革シートに座った際にはそうした印象を受けなかったが、Gクラスのシートは似て非なるものなのだろうか。

さらに走行中に気になったのは、後方視界の悪さである。
元々リアウインドウ自体も決して大きくはなく、さらにバックドアに設置されるフルサイズのスペアタイアカバーの上端がその窓枠に被っていることからお世辞にも良好とは言えないGクラスの後方視界であるが、実際に運転席に座りバックミラーを見ると後席中央に鎮座する巨大なヘッドレストが視界のど真ん中を塞いでしまっていることが分かる。

▲決して良好とは言えないGクラスの後方視界をさらに損ねている後席中央の巨大なヘッドレスト。特に前後を走る車両と自車の位置関係を常に意識する必要がある高速道路の走行中にはかなりのストレスとなった。

そのため、走行中に後続車両を確認するためには頭を少し左右に振ってヘッドレストの隙間から垣間見るようにしなければならず、これは極めてストレスフルなものであった。
特に高速道路を走行している最中は、後続車両との位置関係を常に意識しなければならないことから、その精神的な疲労度は無視できないほど。いっそのこと、後席中央には座っている人間がいないのだから、ヘッドレストを外してしまった方が良かったのかもしれない。

返却地点まで残り40kmを切った辺りで燃料計が1/4を下回ってきたため、ロードサイドのガソリンスタンドに立ち寄り給油をすることにした。
今回利用しているカーシェアサービス・Anycaは距離従量課金制を取っているため、給油の際に燃料代の支払いは発生しない。車内にあらかじめ搭載された専用カード(『AMSカード』:オリックスが展開する5ブランドのGSで使用可能な法人向け燃料給油カード)を使えば懐を痛めることなく支払うことが可能だ。

▲給油時のレシート。備え付けの専用カードを使用して支払うため、レシートには給油金額が表示されない。これは少々不思議な感覚だ。

Gクラスの燃料タンク容量は96Lだが、想定通り3/4に近い72Lの軽油を飲み込んだ。
ハイオクがリッター190円はおろか200円にすらなんなんとする昨今の燃料油価格高騰の世相において、ハイオクと比べ概ね30円近く安価な軽油で走るのは、ディーゼル車を選ぶ際の大きなメリットの一つである。(それでもかつてのレギュラー価格に近い、もしくはそれ以上の値段であるのは資源高を恨む限りだ。)

しかし、計算上の燃費は約6.5km/lと意外に伸び悩んだこともここで付け加えておくべきだろう。
東京ー伊豆間は高速道路主体の移動だったとはいえ、その後の伊豆半島内での峠越えのセクションを中心にスロットルペダルを深々と踏み込む機会が多かったことが仇となったか。
燃料価格そのものの安さに加え、比較的低い燃料消費率が魅力の一つとして挙げられるディーゼル車にしては、事前の期待よりも燃費が芳しくなかったことは意外な結果であった。
当初はこの結果を見て、筆者の乗り方に起因するところが大きいと思っていたが、その後自動車専門SNSの「みんカラ」に投稿されている燃費データを確認したところ多くのユーザーがG350dは概ね7km/l前後とレポートしており、今回計測した結果もG350dとしてはあながち外れ値ではないことが判った。
いくら低回転からトルクフルで、高回転まで回す必要のないディーゼルユニットを搭載するとはいえ、やはり2.5tを超える車体をフルタイム4輪駆動システムで走らせるわけであり、燃費の悪化は避けられないのであろう。
(参考までに、新世代の「OM656」型3L直6ターボディーゼルユニットを搭載するw463Aのディーゼルモデルは10km/l前後という報告が多かった。モデルチェンジによる各部リファインの影響はこういう所にも現れているのだろう)

▲18時半ごろ、借り出した都内のステーションにGクラスを返却。返却期限までは残り30分。

午後6時半ごろ、前日朝にGクラスを借り出した都内のAnycaステーションに帰着。
狭い路地裏に位置する駐車場には相変わらず苦労させられたものの、2日間と500km超を経て身に付けた車体感覚で多少はスムーズに取り回せるようになったことが密かに嬉しい。高いアイポイントと見切りの良いスクエアな車体は、都内で乗る上では意外なほどストレスフリーだ。
今回は36時間パックでの予約だったが、駐車した時点で返却期限までは残り30分と、まさにギリギリまでGクラスを味わい尽くした2日間であった。まずは大きな事故やトラブルなく帰ることができ、ホッとしたところ。

▲返却時の走行距離は83,707km。2日間を通じた走行距離は500kmを超え、Gクラスの実力の片鱗を理解するのには十分な機会だった。

出発時83,181kmだったオドメーターは83,707kmになり、述べ走行距離は526kmであった。保険の関係もあり途中で運転手の交代は行わなかったため、これは全て筆者の運転によるものである。
さて、Gクラスと過ごした濃密な2日間を振り返り、今回のインプレッションの総括に移ることにしよう。

総括:「軽油のゲレンデ」は買いか?

さて1泊2日、のべ500km以上の道程をG350dで走破して見えてきたのは、「Gクラス」というプロダクトの持つタイムレスな味わいと優れたディーゼルユニットが組み合わされた結果、G350dは実に魅力的なクルマに仕上がっているということだ。

まずGクラス(w463シリーズ)を総合して評するとすれば、軍用車譲りの本格的オフロード性能を誇りながら、長年のリファインにより快適なオンロード性能も手に入れた「本物志向」の元祖高級RV、と言うことができるだろう。
1979年の初代モデル(w460)の登場以来、2018年に3代目(w463A)にモデルチェンジを果たすまでの実に40年近くに渡り、ラダーフレームや足回りを始めとする基本的なコンポーネンツの設計を変更することなく各部の改良を重ねてきたGクラスであるが、やはり各部に基本設計の古さを感じることは否めない。特に今回テストした2016年式のG350dには、同世代の欧州車ではすでに珍しく無くなっていたACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)をはじめとする基本的な先進運転支援システムは備わらず、AppleCarPlayなどの現代的な快適装備も用意はされていない。

しかしそれは、旧態依然とした不便さをユーザーに押し付けるような気分の悪いものでは決してない。むしろ、バシャっという独特の感触を伴いガッチリと閉まるドアやミシリとも言わない堅牢な建て付けの内装、そして現代ではほとんど見られなくなったRB方式のステアリングを始めとする妥協のない設計の足回りなど、車体の随所に見られるコストのかかった造りからは、現代の他のクルマでは出会えないGクラスだけの世界観を味わうことができる。そして何より、その気になれば如何なる路面状況でも怯むことなく立ち向かえる、比類なき悪路走破性を備えているのである。
「そんな高性能をどこで使うというのか?」という外野の野暮な問いかけには耳を貸す必要はない。秘めたる高性能をひけらかすことなく、サラリと普段の生活の中でGクラスを実用する。実に贅沢なことだとは思わないだろうか。


そして、こと今回テストに供した「G350d」に限った話で言えば、トルクフルなディーゼルユニットが、Gクラスの走りをさらに愉しくすると言えよう。燃料消費率こそ昨今の欧州クリーンディーゼル車の中では伸び悩むが、同じGクラスでも4.4L V8ガソリンユニットを搭載するG550や、6.2L V8ガソリンユニットを積むG63に比べれば経済的。ラインナップ中では最もベーシックなグレードでありながらGクラスの持つ無二の世界観を十分満喫することができる。
Gクラスのエントリーモデルとしてガソリンモデルにステップアップするもよし、ディーゼルならではのドライバビリティと経済性を併せ持つ合理的な選択肢として日々の足に使い倒すのも良い。

今回のテストでは肝心のオフローダーとしての素質を試すステージに恵まれなかったことが残念ではあるが、きょうびGクラスを本格的にオフロードへ持ち込むユーザーも少数派であろう。
使用されるシチュエーションとしてはもっぱら一般道と高速道路が主体と考えられるため、今回のテストで得られた印象はこれからGクラスの購入を検討している、あるいは現在すでにGクラスのユーザーの大多数が感じていることからそう遠くはないと考える。

1994年のw463シリーズへのモデルチェンジ以来、2013年になって漸くG350dの前身となる「G350ブルーテック」が登場するなど、ガソリンモデルに大きく遅れてのラインナップとなったGクラスのディーゼルモデル。当時の新車価格は1,000万円を少し超える程度とガソリンモデルと比べて500万円近く安価だったということもあり、Gクラスの世界への間口を広げその敷居を低くすることに貢献したモデルであることは間違いない。
一方、登場から7年近くが経過する今でも中古車市場での人気は未だに衰えず、そのボリュームゾーンは700万円前後の辺りに集中している。もしG350dの購入を検討しているのであれば、少々高価な初期投資は覚悟する必要があるだろう。
しかし、幸いにしてGクラスはその高いリセールバリューでも知られる人気車種だ。勇気を持って飛び込んでも、きっと大火傷することにはなるまい。

何より、貴方がGクラスの持つ無二の世界観に憧れているのであれば、「本物」を所有することで得られるあらゆる体験にきっと満足すること請け合いである。

<サマリ>G350dの○と✖️

2日間のテストを通じて見えてきた、筆者の考えるG350dの”○”と”×”は次のとおり。

《G350d の○》
・「OM642」型3L・V6ディーゼルターボユニットがもたらす、低回転からの分厚いトルク特性
・走行中にディーゼルユニットであることを意識させない洗練されたドライブフィール
・2.5tを超える車体をスムーズに減速させるブレーキシステム
・今では少なくなったRB方式による甘美で正確なステアフィール
・高いアイポイントとスクエアな車体により実現する見切りと取り回しの良さ

《G350dの×》
・意外と伸びないV6ディーゼルターボの燃費
・ディーゼルユニット特有のエンジンブレーキの弱さ
・ショックレスだが右足の意図とリンクしない場面が多々見られた7GトロニックPLUS
・良路はともかく、アンジュレーションが連続する路面で露呈する足回りのダンピング不足
・操作はシンプルだが、やはり直感に反する電子式シフトノブ(「P」レンジはボタンによりセレクト)
・背中・腰のサポートは良好も面圧の高いシート座面
・元々良好ではない後方視界を大きく遮る、巨大な後席中央ヘッドレストの存在感

〈テスト車のデータ〉

《メルセデス・ベンツ G350d(w463)》
VIN:WDB4633482X259120
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4575×1860×1970mm
ホイールベース:2850mm
車重:2550kg
駆動方式:フルタイム4WD
エンジン:OM642型 3リッターV6 DOHC インタークーラーターボ(ディーゼル)
トランスミッション:7段AT(7G -TRONIC PLUS)
最高出力:245PS(180kW)/3600rpm
最大トルク:600N・m(61.2kg・m)/1600-2400rpm
タイヤ:(前)265/60R18 /(後)265/60R18(GOODYEAR EfficientGrip SUV HP01)
燃費:10.3km/L(JC08モード)
価格:1070万0000円
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:83,181km
走行状態:ロードインプレッション
テスト距離:526km
使用燃料:約80リッター(軽油)
参考燃費:6.5km/リッター(満タン法)

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